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2006年8月23日 (水)

五島美代子

図書館にリクエストしていた大鹿清明「ヒルズ黙示録」がようやく到着し、一読。こんな世界もあるのだなあ、という他人並みの感想を抱く。ただ、例の広報担当、乙部綾子さんの堀江評が面白いコトバなので記録しよう。

堀江さんは女性を本当に愛したことがないと思う。誰かと熱烈な恋愛をしたり、失恋して傷ついたりすることができない人なんです。あの人、自分が一番好きだから。

そうか、「自分が一番好き」か。だったら俺も一緒やん、なるほど、と思う。
しかしすこーし考えてみると、「自分が一番好き」だったら「女性を本当に愛」せないのだろうか、という疑問も湧く。だいたい「好き」とか「愛」の程度を相互に比較計量することができるのだろうか、とも思う。
たぶん、「好き」とか「愛」の程度を抽象的に比較計量することはできず、具体的なトレードオフが問われるような場面局面での当事者の行為により推量されるようなものだろう。「愛」している当人にしてもその時そのときの判断、行為をしているにすぎないのだから。

とはいえど、「自分が一番好き」だから他人を「本当に愛」せないということはあり得ることである。そうか、俺の「人間大好き、他人は嫌い」というのは俺のジコチューに自己愛に理由があったのかと納得した次第である。自己愛は少なくとも他人嫌悪の理由にはなるのである。

さて、今日は五島美代子。リンクしたブログの筆者は「日本の伝統的な価値観の中にいき続けながら社会問題・国際問題までも視野に入れようとした五島先生」と表現されている。

 花に埋もるる子が死顔の冷たさを一生たもちて生きなむ吾か

1句「花に埋もるる」字余りでの開始を2・3句「子が死顔の冷たさを」で受け止めて、下句は一気に「一生たもちて生きなむ吾か」とぽつんと疑問形で投げ出して終わる。「花」と「死顔」の対比が棺にあるわが子を喪った母親の悲しみを映像化し、「冷たさ」を「一生(ひとよ)たもちて」生きるという困難に読者は思いを致すという歌である。
母親というものは逆縁で早世した我が子に対してこのような切実な感情を持つのであろう(俺は親になったこともなく早世した我が子もいないから想像するのみだけれど)。
この歌は我が子を亡くした母親という私の切実を結晶させている屈指の歌である。

思うに、短歌は徹底的に私歌である。たとえ写生歌であろうと、写生を通して私を歌いたいという作者の情念の流露が短歌に結実する。読者も、短歌に作者の私を味わいたくて、作者の私を感じ取り自分の私と比較したくて、短歌を読む。私(という不可思議→開闢の奇跡)を抜きにして短歌は成立しないのである。

だから、自己愛とまでは言わないが少なくとも自己に対する興味関心が無いと歌は出来ない。他人のことを他人事として歌う他人歌は短歌ではあり得ないのである。Photo_108

ところで、「五島美代子」で検索して「朝日歌壇とサヨクを考える資料室」に遭遇した。その中の「昭和短歌の再検討『ベトナム戦争にみる新聞歌壇』」が五島美代子他朝日歌壇のいわゆる社会派傾向を批判している。右だ左だというヤヤコシイ議論は嫌いだけれど、新聞歌壇に現れたベトナム反戦歌の中に私歌ではなく他人歌がありそれは矢張り今から振り返るとつまらない歌だと思うのも否定できない。やっぱり俺はジコチューなのだ。

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コメント

あ、なんかなつかしい、五島美代子。短歌をはじめたころ薄い歌集を買って読んだことがありました。たしか美智子皇后の歌の先生をしていたひとですよね。子供を亡くされてからの歌は痛々しすぎて、読む方も胸がいたみます。下の歌のような幸せはもうもどらなかった。

 あけて待つ子の口のなかやはらかし粥はこぶわが匙に触れつつ

投稿: 鏡像 | 2006年8月23日 (水) 午後 01時45分

こういう歌もありますねえ。
 ひそやかに花ひらきゆくこの吾娘の身内のものに思ひ至りつ

ええなあ、こういうの。ちょっぴり女が憎らしいです。

投稿: 土曜日の各駅停車 | 2006年8月23日 (水) 午後 03時16分

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