雪の句@細雪、墓標なく
今日は趣向を変えて「雪」の例句から。
酒のめばいとど寝られぬ夜の雪 芭蕉
綿雪やしづかに時間舞ひはじむ 森澄雄
みづからを問ひ詰めゐしが牡丹雪 上田五千石
細雪吾に言葉を待たれをり 石田波郷
波郷の句には注釈が必要だろう。昭和21年「疎開先の埼玉から妻と二歳の長男を連れて上京」、「妻と幼な子を連れて東京へ出てはきたものの家もなければ仕事もなく胸の病気も芳しくない」。そんな中での「切羽詰った一事だけを取り出して」の一句である(引用は長谷川櫂「俳句的生活」より)。
そして、俺の句「細雪われに子はなく墓標なく」。
実はこの句、初案「わが後に何ぞ跡なし冬の夜」だった。しかし、季語が気に入らず歳時記をめくっていて「細雪」を発見した。谷崎の名作もあるし、重い季語だなあと思っていたところに上の波郷の句と解説に出会った。
まあいいや、行けえと投句してしまったけれど本意を得た句ではない。これからも何度も、雪ないし細雪に挑戦したい。季語があるから俳句に登る、を実感している。
※画像は明治座 2005年11月公演「細雪」から勝手拝借/感謝なれど、「通算上演一千回を超える現代美女絵巻」と惹句にある。原作を読んだことはないけど、これでは原作者が可哀想とも思う。
※この句と同時作の短歌。
他家の子が俺を呼ぶなりジイジイと俺は他人じゃセミでもないぞ
こちらの方が出来がいいな。安易な性格には安易な短歌が似合うなり。
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