沈丁花の二句
沈丁花という名前は、香木の沈香のような良い匂いがあり、丁子(ちょうじ、クローブ)のような花をつける木、という意味でつけられたそうだ(クローブの花蕾は釘に似た形をしているため、中国では釘を意味する「丁香」「丁字」の文字があてられ、フランス語では釘を意味する Clou と呼ばれ、英語の Clove もこれを語源とするそうだ)。
つまりは、釘のような形をした良い匂いの花ということである。
沈丁の眠らぬ夜も老隣
初案イメージ「中年や夜も匂へる沈丁花」だったが、これは明らかに「中年や遠くみのれる夜の桃」の剽窃なのでさすがに採れなかった。
それはともかく、俳句のお陰でカメラのお陰で、身近にあった沈丁花の香と花に気づくことができた。目の前のもの全てが見えるのではない。人間は、見ようとするもののみを見ることができるのである。すなわち、存在が認識を規定するのではなく、認識が存在を規定する(天動説から地動説へ、カントのコペルニクス的転換)のである。
沈丁やをんなにはある憂鬱日 三橋鷹女
沈丁にすこし開けおく夜の障子 有働 亨
ぬかあめにぬるゝ丁字の香なりけり 久保田万太郎
沈丁や夜でなければ逢へぬひと 五所平之助
リハリビスト 波平の日記が「部屋の中では妄想に近いような妖しい雰囲気」として沈丁花の他の句を引いているので更に興味のある方はどうぞ。また、「夜道を歩いていて、よその庭から匂つてくるのはなんとも言えない」とわたしの俳句歳時記も書いている。
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