菜種梅雨
嘘泣きの上手な女菜種梅雨
ヴィオロンのやさしくかなし菜種梅雨
菜種梅雨毎日飽かぬお喋りめ
ブラームスのバイオリンソナタを聴きながら、小澤實「万太郎の一句」から句を拾って歳時記に書き込んでいたら二句目が浮かんだ。そのときの万太郎の句は「春水のあふれてゐたるところ」だった。小澤實は解説に「折口信夫が最高と説く無内容の句には、このようなものを掲げてもいいかもしれない」と書いている。
そうなのだ、名句とは、純音楽と同様に指示対象が存在せず、感情そのものを抽象化普遍化したものではないだろうか。
それにしても毎日よく降る。ご苦労なことである。
唄はねば夜なべさびしや菜種梅雨 森川暁水
菜種梅雨負け犬去りてわれ佇ちぬ 岸田稚魚
昼汽車のひと日の空費菜種梅雨 桂 信子
わが魔羅の日暮の色も菜種梅雨 加藤楸邨
暗く冷たく淋しいけれど、どこか生命力を感じさせる雨が菜種梅雨であると楸邨の秀吟を見て思う。男は嘘泣き出来ないのだ(ということにしておこう)。
| 固定リンク
「俳句写真」カテゴリの記事
- いつまでもあなたとあたし秋暑し(2008.09.05)
- レンゲショウマ@奥多摩御岳山(2008.08.17)
- 信濃路や山河に出逢ふ夏の蝶(2008.07.28)
- 姑が立てなくなった(2008.07.23)
- 入笠山吟行(2008.07.22)

コメント