一等賞句の講評
こういう機会は滅多に無いから現代俳句協会のサイトから俺の一等賞句及び上位句の講評をここに記録しておこう。評者は松田ひろむ氏。
類想から離れる(第75回)
今月も新顔と見られる方が上位に増えて、これからますます楽しみです。
前回は「一」の多様の安易さを指摘しましたが、今月はほとんど「一」はありませんでした。こうした互選のネット句会ではいかに類想類句から離れるかを絶えず意識して欲しいと思います。
得点 番号 句 俳号(会員番号)
13 1092 たましひをそつと吐き出す蛍かな 土曜日
「蛍狩して魂を置いてきぬ」(関戸靖子)など蛍のはかなさは魂につながりますが、作者は、その蛍自体を見つめて「たましいをそっと吐き出す」とみたのでしょう。想念よりも写生的な表現を肯定できます。
其子等に捕へられむと母が魂蛍と成りて夜を来たるらし 窪田空穂
蛍を母と見たこの歌は印象的でした。
13 274 すれ違う風も旅人夏帽子 中村 光声
明るい夏のイメージ、「風も旅人」が爽やかです。そういえば「夏帽子風がめくりぬ旅の顔」(小檜山繁子)も同じ印象でしょうか。
12 482 ペン立てに耳掻き混じる桜桃忌 湖石
確かにペン立てにはなぜか耳掻きがありますね。それと桜桃忌。そのかすかな違和感のなかに確かな詩情が感じられます。
「想念よりも写生的な表現を肯定できます」が有難く嬉しいコメント。俺にとって、写生への道を一歩踏み出せた記念すべき句だと思おう。ありがとうございました。
ちなみに、蛍にちなむ短歌を一首、引いておこう。この歌をウロ覚えていなければ一等賞句は得られなかったかもしれない。相場も俳句も記憶のゲームである。
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