移民開国せよ日本
昨日の日経がグリーンスパン前FRB議長のインタビューを「バブルは防げない 危機吸収 する柔軟な経済を」と見出しをつけて大々的に報じている。グ氏新著「波乱の時代」を自社から近刊するからだろう。とはいえ、面白かった。目についた所をいくつか記録しておく。まず、「イラク戦争の本質は石油にあると指摘しているが」との質問に対する答え。
米政権が石油のために開戦したと言っている訳ではない。私にはイラクのフセイン元大統領が中東原油を支配しようとしていることが明白に思えた。原油輸送が止まれば主要国経済は停止しただろう。フセインが引きずり降ろされた時はほっとした。
開戦当時のFRB議長の発言だからこれは重要。フセインが原油輸送停止まで意図したかどうかは判らないが、開戦理由が米政権が表向き口実にした「大量破壊兵器」になく、石油をめぐるアメリカとイラクの対立にあることはこのグ発言によっても明白だろう。
すなわち、アメリカは「ドルの帝国循環」を崩そうとしたフセインを懲罰するべく、イラクを侵略したのである。
次に、格差問題について。「技術革新やグローバル化に伴う貧富の差の拡大を懸念する声も増えている」との問いかけに対して。
新しい発明と歩調を合わせて人々の技術的能力が高まるわけではない。低い技能しかない人は賃金が低下し、高技能の人は給与が大幅に上がっている。民主社会にとっては危険な傾向だ。富が公平に分配されていると人々が思わなければ、資本主義への支持も得られない。
教育によって人々の技能を高め、それによって所得水準を上げていくことが重要だ。富裕層への課税で所得を再配分すれば、全体の所得を低くしてしまうだけだ。
グ氏をはじめとするアメリカ支配層は市場原理主義者(市場原理に全てを任せれば何もかも解決するという考え)のように思っている人が多いだろうが、この発言を見る限り少なくともグ氏はそんなことはない。
資本主義が成立する前提として富の公正(公平よりこの言葉が適切だと思う)な配分を指摘しているし、格差是正の手段として教育を挙げているのは納得できる考え方だからだ。ちなみに、小泉政権は就任演説で「米百俵」の精神を謳ったけれど教育による格差是正に関しては具体策は何も無かったように思う。
ただ、税の所得再配分機能(平等促進)については(過度な強調は)全体のパイを小さくすることにつながるのでグ氏は反対しているのだと思う。つまり、平等よりは公正と自由、それが20世紀の社会主義の悲惨な実験の教訓だと考える。
要するに、公正な市場と教育の充実による活力とが資本主義を支え自由な市民社会を繁栄させるという当たり前のことだ。だから、市場原理主義とか新自由主義とかレッテル張りの議論は不毛である。グリーンスパン、なかなかええこと言うやんか。
最後に日本。「日本経済の先行きは」と問われて。
外からとやかく言うべきことではないだろうが、エコノミストとして見る限り、移民を増やそうとしていないことは日本経済を将来難しい状況に追い込むと思う。生産性上昇や労働人口に限りがあれば成長は鈍くなってしまう。
ちなみに同じ昨日の日経一面連載「復活製造業 死角はないか」は「今春の入試で全国の大学の工学部志願者は26万8千人とピークの92年より6割少ない」と伝えている。
新自由主義がどうしたこうしたとか米百俵などと空虚なスローガンを振り回してばかりいるとこの国は滅びる。そんなことしている暇があったら若者を育てよう、日本の若者にその気がないなら外国から輸入しよう。黒い目でも青い瞳でもなんでもいいからきちんと勉強してしっかり働いて年金を納めて俺を食わせてくれる若者が俺は好きだ。
参考リンク:反帝、反スタから新左翼の条件へ:イザ!
※写真はグリーンスパンの嘘から勝手拝借/感謝です。
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