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2009年4月 2日 (木)

宮元啓一「仏教誕生」読書感想文

仏教書で気に入った言葉「釈迦も達磨も修行中」で検索して見つけたこの本

を読了したので感想文を書いておこう。ちなみに、同書を紹介してくれたサイトは大乗思想批判:『仏教誕生』、『ブッダ─伝統的釈迦像の虚構と真実─』で、このサイトの刺激的な紹介に刺激されて読むことが出来たものである。

1.ブッダは何と闘ったか(諸行無常、諸法無我、縁起)

ブッダは突然に現れたのではない。当時の支配的思想(バラモン教:輪廻・解脱、梵我一如の思想と今は理解しておく)に抗して新興思想(六師外道など)の集大成者(文書で明示した訳ではない)としてブッダを位置づけるべきである。

ブッダの発想は「善悪の彼岸に解脱の境地」があるという点だ。
当時の主流思想(バラモン)は輪廻(因果応報)→だから現世で善行を積めと主張するのに対して、俗世では悪行は不可避、解脱するためには俗世で生きるのを止めて(出家)、善悪の彼岸にたどりつかねばならぬと考えた一群の思想(六師外道、ブッダ)があったということだ。
体制側(バラモン)はこのような思想は危険思想だとして排撃した。なぜなら、若者たちがこのような危険思想に走って出家してしまったら世俗経済が成り立たなくなるからだ。

ブッダの諸行無常、諸法無我という発想は(著者の宮元氏は「人は必ず死ぬ」という単純な意味だとするが)、バラモンが説くところの人間の不変実体(真我: アートマン)など無いという当時としては過激な主張ではないだろうか。諸行無常、諸法無我だからこそ人間は皆平等(カースト制反対)という思想に到達した のがブッダだと俺は考える。

また、ブッダは縁起という因果関係論を強調しているが、梵我一如なる神秘思想に対して合理的因果関係論を対抗させたのではないかと考えたいのだが、インド思想の知識に乏しく、これは今後の課題としておこう。

2.「経験論とニヒリズムに裏打ちされたプラグマティスト」ブッダ

著者は上のようにブッダ(釈尊と著者は呼んでいる)をわかりやすく表現している。無記(形而上学排除:毒矢の喩え)に代表されるごとく、ブッダは観念論者ではなく経験論者、そして、プラグマティストである(ここまでは著者に同意)。その上に、一切皆苦とする点を捉えて著者はニヒリズムとする。

しかし、ニヒリズム(虚無主義)という言葉は誤解を生みやすい。ブッダの覚りが何であったか、著者は

仏教が最終の目標とするところは、そし て釈尊その人が到達したところは、生存欲を断つことだということになる。これをわたくしは、「生のニヒリズム」と呼ぶことにしたい。生のニヒリズムに到達 した者は、当然のことながら、この世に生きることに何の意味も見いださず、したがってまた、なんの価値判断を下すことがない。

とするが、「生存欲を絶」って尚且つ生き続けるということがどういうことなのか、俺には理解し難い。この点、著者は「少欲知足という名のもとにおける生存欲の完璧な抑制」と説明しているが、これでは「生存欲を絶つ」ことにはならないだろう。ブッダに是非とも説明してほしいところである。

そこで、(エラソーにも)ブッダに代わって考えると、ブッダは矢張り、生を肯定したと俺は考える。一切皆苦(だから、生きちょるだけで丸儲け)、その上でどのように生きるのか、それをブッダは八正道と説いたように考えたいのだ。

3.中道(八正道)を生きる<全ては図と地>

著者は中道を「苦楽中道」と表現する。苦行は生存欲を根絶させることはできない、他方、享楽的生活は我執・煩悩を生むだけである。従って「この両極端を捨て」るのが苦楽中道(正見・正思などの八正道)であるとする。

Lubin だが、ここで俺は考えた。正しい、邪まなどといっても所詮はコインの裏表。図と地の関係と捉えたらどうだろう。
あるアスペクト(観点)から見れば図ではあるけれど、別のアスペクトからするとそれは地。ルービンの盃が盃に見えたり人の横顔に見えたりするのである。ブッダのいう中道とは多様なアスペクトから物事を(当然に自分自身も)見よということではなかろうか。

4.生を肯定して中道(多様性)を生きる

かくして、人生方程式
人生=世俗(損得、好き嫌い、理非、善悪)+魂(苦楽、美醜、正邪)
に考えは及ぶ。

生を肯定し(スピノザ:物にも生命にも人間にも共通な力=コナトゥスの肯定)世俗を暮らしつつ、他方で、人は魂(非社会的実存)を生きる。魂は世俗(特に 善悪)を超越しつつ苦楽も美醜も正邪もコインの裏表、いろんなアスペクトから人生を楽しむのである。それがエロスだと俺は思う。

 エロスより出でてエロスに環り来む意味を求めてめぐりし後に

参考リンク:①ブッダは何を悟ったか ②感情論@「エティカ」を読む(4)

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