科学が進化する5つの条件
科学が進化する5つの条件 (岩波科学ライブラリー) 市川 惇信 by G-Tools |
小説を読んでみる気に久しぶりになって西村賢太「二度はゆけぬ町の地図」を読んで(ある描写について鮮烈な記憶刻印。しかし彼の作品を読むには「体力」要)から図書館で本を借りる習慣が復活した。
そこで、先日読んで面白かったのがこの本。内容を上手に紹介されている記事があったのでそちらから拝借コピペすると
市川氏の挙げている「科学が進化する5つの条件」は、次のとおりです。
(1)言語能力の余剰
(2)整合的世界観
(3)経験知の獲得を許す社会
(4)目的論ではなく過程論に立脚
(5)文明社会
(1)(5)は科学を生み出すための言うならば言語・社会的基礎的余裕で、科学を表現できる言語(大抵の言語は備えている)と科学に携われる階層(知識階級)の存在である。江戸期日本はこの条件を備えていたが問題は(2)(3)(4)。
まず(4)過程論というのは「因果関係を厳密に追求する態度」のことて゜、例えばアリストテレス目的論(万物にはそれぞれ目的があるのだからその間の因果関係を追求してもしようがない)や日本のような豊かな自然風土(因果関係をとことん追求しなくとも食っていける)では生まれにくいものだ。
次に(3)経験知は先験的知識よりも現実の観察や実験を重んじる「帰納法」等による経験知の重視(フランシス・ベーコン)、これは江戸期日本にないこともなかったがヨーロッパのように経験知を活発に交流する風土はなかったなあ。ヨーロッパでは広域言語ラテン語と活版印刷の普及が経験知の重要な推進エンジンになったと思う。
そして科学を発生させる上で最大の条件が(2)整合的世界観。これは「世界は矛盾なく作られている筈だ。創造主たる万能の神が矛盾を生み出す誤りを犯すことはない」との強固な信念である。日本のように八百万の神がいまして相互に矛盾があって当たり前、なあなあでやっていけばいいじゃん風土には生まれない信念である。著者によると高名な日本の物理学者でも会話してみたら整合的世界観は持っていなかったとのことだ。
また、著者は、科学は「言葉の世界に自然を写す写像」、技術は「言語世界を現実世界に写す写像」と主張している。そうか、俺のモデル論的転回(我々は現象の奥に真理を発見するのではなく現象のこちら側に真理モデルを構成しているのだ)においてもこの科学、技術の定義は使えるなあ、更には、著者は俺のモデル論的転回と同じことを言っているのだと考えた次第である。
文章がゴツゴツしていて少し読みにくいけど刺激的な本だった。この岩波科学ライブラリーはなかなかユニークなライブラリとなっているので要注目である。
哲学に倦みて科学書冬灯火
2011年01月30日(日)
3:45起床。昨夜わざわざ担当の方が第九DVDを持って来てくれたので、ビデオデッキHDDにダビングなう。ラコッツイ行進曲が済んで今は威風堂々、もう少ししたら合唱登場。先日、郵送されてきたDVDが第九の一番のピークで内容不具合(画面飛び、音声消滅)の交換品のチェックである。
posted at 04:05:40
@sunajopon @biwaprancer @azumizoku @itutubosi @kgussan @udonenogure1 他の皆様、おはようございます。プロの演奏もいいけどアマも(特に自分たちの)感動的な朝です。posted at 05:22:01
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