小林正樹「人間の條件」1959~1961
日中戦争下の満州、召集される可能性を考えて恋人との結婚を躊躇っていた主人公梶。召集免除と引換に鉱山現場での労務管理に妻と赴くが…と始まる物語。現場での板挟み苦悩があって遂には憲兵に刃向かい懲罰的召集され今度は不条理皇軍内務班、更にはソ連軍侵攻の敗残兵となり逃亡、投降/捕虜生活と辛酸を極める。それでも妻のもとを目指し雪の中で死ぬ。
この主人公の生き方を俺はどう捉えたらいいだろう(俺だったら相当に早い時点で一見安易に見える投降を選ぶだろうな)。なかなか捉え難くそればかりを考え続けて鑑賞した結果、第六部(この巻が一番。梶とは対極の生き方をしている高峰秀子が秀逸)後半になって「潔癖」という言葉に思い当たった。そうだ、梶(仲代達矢)は潔癖なのだ。潔癖だから自分の生き方が正しいか否か常に点検している。自分にも厳しく他人にも相当程度の厳しさを要求せざるを得ない。その潔癖さが彼の価値観なのだ。
閑話休題。一人っ子(だいぶ齢の離れた妹が後に出来たが)で爺婆(爺の内妻)に甘やかされて育った俺は自分にも甘く他人にも甘い。就職、仕事で多少は賢くなったがそれでも「人には厳しく自分には甘く」と嘯く始末。更にはスピノザ肯定哲学に感化されて「自分も人間も社会も世界も赦せ」ブログ記事を書いている。
そんな俺でも、梶の台詞にうならされた。ひとつは「臆病になるな、諦めるな」ソ連軍との初めての実践に際して手塩にかけた新兵に向かっての言葉。もうひとつは「終わったのではない、始まったのだ」高峰秀子が体を張ってソ連軍との戦闘を止めたので止むを得ず投降した時の言葉。生きてる限り終わりはない。新しく物事が始まったと前向きに捉えるべきなのだ。だから例えば仮に俺が死に至る大病になったら思い出そう。「臆病になるな、諦めるな、始まったのだ」。
そんなことを昨夜考え、ツイートして一夜明けた今朝、閃いた。題して俺の人間の条件(生き方フレームワーク)。
(1)価値観
何のために生きるかという価値。愛でもエロスでも快楽(けらく:我がネット朋友はこう読めという)でもイデオロギーでもなんでもいい。人は何かのために生きている。梶は己の潔癖を追求したが、多様な価値観の存在は社会の豊かさの記しだ。
(2)態度
物事に接する態度。「臆病になるな、諦めるな、始まったのだ」を我が戦陣訓としよう。
(3)思考力・判断力・行動力
体を張って戦闘を止めた高峰秀子の勇気ある行動がその一例。俊敏おっちょこちょい行動が良いかどうか議論はあるが。
つまりは、生き方(人間の条件)は(1)価値観(2)態度(3)力に因数分解モデル化できるということだ。五味川純平さん、小林正樹さん、ありがとう。
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2011年08月22日(月)
@doyoubi は23081日生きた。人生あと6919日しかない。今日は有意義だったか? #30thou http://t.co/JlbEeUC
posted at 01:13:45
2011年08月21日を有意義に過ごした。"プール、たいした雨ではなかったから行けないこともなかった..." http://t.co/JlbEeUC #30thou
posted at 07:51:27
読みとって頂いてありがとうございます。世界貧困絶滅とイノベーションが不況からの脱出路のように思います。 RT @yataro03: 季節の移ろいと同時に世界経済も新たな段階に入ったの感がありますね。QT @doyoubi: 新涼や丹念に読む経済紙 #jhaiku
posted at 08:13:22
@biwaprancer おはありございます。結構な雨なので車でプールに向かう朝です。
posted at 08:14:47
秋の蝶世界は「私」で満たされて #jhaiku #fhaiku #haiku #kigo 悪寒悪熱の一句かも http://t.co/sbi29Bk http://t.co/knGs2B5
posted at 10:39:28
ヴェルビエ音楽祭2011、難しい名前カティア・ブニアティシヴィリ美人ピアニスト、リストのロ短調ソナタ(ちゃんと聴いてないけど)いまいち迫ってこなかった。ペトルーシュカなうはいい。テクはあるけど表現力はこれからとエラソーにつぶやいておこう。 http://t.co/LfVMOrB
posted at 10:46:43
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リスト・アルバム ブニアティシヴィリ(カティア) ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() by G-Tools |
「人間の條件」第三部途中から第六部最後まで一気鑑賞。主人公梶を俺の中でどう受け止めるか、そればかりを考え続けて観ていた。そして、答えは「潔癖」。この作品、ヒューマニズムでも夫婦愛でもなく軍隊告発でもなく、潔癖に生きた男の物語だ。何でも(特に自分を)すぐ赦してしまう俺の対極だなあ。
posted at 19:15:34
「人間の條件」は第六部が一番。高峰秀子の存在が抜群(あ、今気づいたが、潔癖な梶の対極だ)。そして気に入った台詞は「臆病になるな、諦めるな」、もう一つは「終わったのではない、始まったのだ」。仮に俺が死に至る大病になったら思い出そう。「臆病になるな、諦めるな、始まったのだ」。
posted at 19:20:51
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