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2012年5月 3日 (木)

経済×政治×文化(芸)

井上ひさし「黙阿彌オペラ」、前半は冗長、セリフを語る役者のガナリ声も耳について少々退屈だったが、後半/明治維新後から俄然面白くなった。

ひょんなことから出会って株仲間を組んだ連中、文明開化富国強兵の波に乗って権力にすり寄って出世しようとする男たち(改革派)と上辺だけ近代化しても人の心と言葉はなかなか変わらないとする守旧派(黙阿彌ただ一人)の対比対立が軸となる後半。

この対立どうなるかと思いきや、改革派が銀行事業に失敗、蕎麦打ちから出直そう、みんな一緒に生き抜こうという明るいメッセージで目出度くハッピーエントとなるのだが、その背景事情が面白かったのでググッて特記しておく。

明治政府は、歳入面では米を中心とする現物納付を、歳出面では石高で固定された家禄支給という現物財政を幕府から継承しました。これらを貨幣財政に移行することが喫緊の課題だった訳です。まず、歳入面では1873年の地租改正により、地価を確定した上で土地所有者に地券を発行して所有権を確定し、地価の3%を定率で金納徴収することが決まりました。続いて、歳出面では、この1876年の金禄公債証書交付条例によって、金禄の高に応じて、より高い金利、より長い年限の国債が交付され、禄制が廃止されました。今の時代に照らせば、退職金のようなものと見てよいでしょう。ここで重要になるのは、この金禄公債の価格が維持されることです。公債価格が下落すれば、秩禄を削減され不満を溜めた旧士族の反政府運動を助長することになりかねません。そこで、金禄公債を吸収するための装置として国立銀行が利用されました。

改革派はこの波に乗って銚子国立銀行設立して一儲けしようとしたのだが、融資先(猪苗代近辺の荒れ野開拓)破綻の道連れであえなく失敗となるのだ。井上ひさしは、明治維新(現物経済から貨幣経済、世間金融/高利貸し・無尽から市場金融/銀行・証券)をきちんと踏まえた上でこの人間喜劇を書いたのだと感心した。

猿真似で経済はなんとか離陸させて最後は大東亜戦争。それでも明治維新の遺産(教育制度と民度の高さ)でなんとか再出発に成功、けど、バブル崩壊で沈みっぱなしの日本。経済はなんとかなっても政治と文化(芸)が猿真似の限界となるということだ。

結局、国力の根本は文化(芸)。芸が身を助けるというではないか、労働者諸君。

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2012年05月02日(水)

@doyoubi は23335日生きた。人生あと6665日しかない。今日は有意義だったか? #30thou http://t.co/zqTPeoUK
posted at 00:21:27

2012年05月01日を普通に過ごした。"シナイスキーN響「大地の歌」新響ライブを思い出しながら。「世界から見た福島原発事故」方針を定めず成り行き任せが日本的というかアメ..." http://t.co/zqTPeoUK #30thou
posted at 05:46:11

@biwaprancer おはありございます。ゆうとり、車で行こうかと思案の朝です。
posted at 07:52:17

BSシネマ「あゝ結婚」 - NAVER まとめ http://t.co/ACY3q4fv 愛は瞬間、生活は継続。男は瞬間芸なのに女は着実に継続しようとする。ソフィア・ローレンはまことに女の鑑、観るだけで目の保養になる。後半ドロドロ話で少々嫌気がさすが瞬間の接吻がハッピーエンド。
posted at 13:42:05

BSシネマ「道」 - NAVER まとめ http://t.co/PORcEmb3 キリスト教の暗喩・構造が散りばめられているとは知らなんだ。イエスより観音様の方が身近な俺には論理的理解も感情移入もやはり難しい。ましてや最後の男の号泣に至ってはイエスの復活の意味理解を要するのかも
posted at 17:30:57

♫ Duruflé, Requiem: Introitus & Kyrie (orch. version) ♪ o7'o*108: http://t.co/p0Gj9Y6t @youtubeさんから、N響A定期5/13予習用。フォーレのレクイエムと全く同じテキストだそうな。
posted at 19:11:47

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